2015/02/27
1月19日から、沖縄県を対象とした訪日中国人に対するマルチビザの条件緩和がなされた。具体的には「過去3年以内に訪日経験」がある人については、経済力の要件を緩和し、「一定の経済力」が確認できればマルチビザが発給されることになった。聞くところによると従来の1/3程度の経済力で良くなった。また、これまでは、家族はマルチビザ取得者と一緒に訪日する必要があったが、家族のみの渡航も認められるようになった。過去三年間の訪日経験者は、約515万人いるので、所得条件があるものの大きな誘客効果が期待できる。
今回のマルチビザ緩和に加え、昨年からの円安傾向、昨年10月にスタートした免税制度により、3つの大きな外部環境の変化により、今年、中国人観光客は大幅に増加するだろう。また、ある外部調査によると、中国人の今年行きたい観光地の№1は、日本であったことから、ニーズがあることは間違いない。2011年7月にマルチビザが導入された際、航空路線の増便やクルーズの寄港増加などの大きな効果があった。今回も同様な効果、むしろ前回以上の効果が期待できる。
既に新規航空会社からの那覇空港への就航について、相談を受けていることから、市場の展開の早さに改めて驚かされる。新規航空会社の就航や増便により、航空料金の低減が図られれば更に訪問しやすい環境が整う。個人的には、今年の上海~沖縄路線は、台北~那覇、ソウル~那覇と同様に、一日5便体制とし、送客人数においても、肩を並べるレベルにまで引き上げたいと考えている。今回のマルチビザ緩和や旅行スタイルの変化も合間って、今後は個人旅行が増えることになる。
このように大きく期待できる環境下にあるが、大きな課題が存在する。ホテル不足と2次交通の充実、バスやガイド不足だ。半年以上前から、上海の主要旅行社からは、ホテルが確保しにくいという声を聞いていた。中には、送客を断念したケースも発生しているという。今年の春節時期においても社会問題となった事から明らかだ。他の戦略特区で検討している遊休化したマンション等の宿泊施設への活用についても、本県も真剣に検討すべきと考える。また、レンタカーが運転できない中国人にとっては、2次交通の充実や情報発信が急務である。クルーズが増加することから、バスやガイド不足も深刻だ。逆に言うと、これらの課題を解決するサービスが提供できるのであれば、大きなビジネスチャンスとなるだろう。
課題はあるものの観光客数の増加は、県産品の販路拡大、投資誘致にも貢献するだろう。本土や香港のように、観光客数やリピーターの増加により、県産品の移出量が増加した成功例がある。観光で沖縄を訪れた際に、食事や購入した県産品を、地元に帰っても購入したい層が、上海でも確実に増えていくだろう。中国人観光客は、県内で約15万円を消費するが、約8万円をお土産品の購入に充てられ、その大半は、日本製の電化製品、化粧品、海外ブランド商品等である。沖縄県産の健康食品、化粧品、お菓子等の購入促進につながるようなPRが必要だろう。
また、このところ、ホテル等観光施設への投資が立て続けに相談が寄せられる。沖縄へビジネスジェットで来訪し、県内ホテルを視察する富豪まで現れている。沖縄が、いよいよ、世界の沖縄になりつつある事を上海で感じている。今年は、観光客誘致を中心に、沖縄は大きく飛躍する年になるだろう。まずは、上海でのPRは、5月に開催される上海旅行博(WTF)がスタートとなる。今回は、旅行博出展にあわせ、上海の旅行会社と県内観光業界との商談会も予定しているので、多くの方に是非参加して欲しい。
沖縄県上海事務所 所長 金城 達雄