2012/09/01
実際に外国人観光客がやってくる!となった時、「ちゃんとコミュニケーションをとれるのだろうか・・・」などという不安がよぎる方も少なくないのではないでしょうか。
過去にOCVBが行ったアンケートなどでも良く聞くのが、「外国語での対応ができないので外国人の受入は難しい・・・」という声です。
しかし、まず必要なのは「相手のことを知って、コミュニケーションを取る姿勢をもつ」ということです。
言葉が分からなくても、よく使う言葉をまとめた指さし会話帳や、写真などのツールを上手く使えば、意思の疎通はできるものです。そして言葉や文化の違いはあれども、笑顔や表情、態度は万国共通です。
もともとある程度の語学力を備えている人以外が外国語で円滑にコミュニケーションをとれるようになるのは時間がかかるものです。しかし、沖縄県民が持っている「おもてなしの心」をもって外国人観光客の皆さんを迎えることで、相手にとってはきっと楽しい旅になるはずです。
それでは、その「おもてなしの心」を示していくためにどんなことが必要か考えてみましょう。
【各国の文化・慣習や観光客の特徴を知りましょう】
「外国人は○○だから受け入れたくない」「他のお客様に迷惑がかかるから外国人観光客には来て欲しくない」など、実際に受け入れてみて、あるいは受け入れたことはないけど話を聞くとそうらしいから、ということでこのような思いを持っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、それは外国人の方が日本の文化やマナーを知らないだけであったり、ついつい自国のように振舞ってしまったりするから、という要因が大きいように思われます。
国によって文化や慣習が異なるため、買い物時や食事中のマナー・行動も異なる点があります。それらを受け入れ側の私たちが理解することで、今までなかったリクエストや質問が飛んできてもあわてず対応できます。また、相手に合わせて必要なもの・情報を揃えておけば、お客様にも喜ばれますし、自らの接客時間も短縮することができるでしょう。
■ 外国人観光客の国民性等 (JNTO website)
http://www.jnto.go.jp/jpn/reference/visitor_support/greeting/index.html
【日本・沖縄の文化・慣習を知ってもらう工夫をしましょう】
受け入れ側である私たちが相手のことを理解するのと同時に、外国人観光客の方々に日本・沖縄のマナーを知ってもらう工夫をしましょう。
「列に並ばない」「何でも値切ろうとする」「客室の備品を持っていかれた」などといったトラブルは、外国人観光客の皆さんが日本の慣習を「知らない」から起こっているケースが多いようです。
それに対して受け入れ側がこちらのマナー、要望を伝えるというのも、トラブルを減らし、外国人観光客の皆さんにも気持ちよくサービスを受けてもらうための方法の一つです。
例えば、
・有料サービスと無料サービスをしっかり説明/明記する
・施設や設備の使い方を外国語で表記する
・「値下げはできません」等の表示をあらかじめしておく
・商品は一つサンプル用として開封したものを置いておく
など、事前に明記しておくことで、お客様への理解を求めてはいかがでしょうか。
【外国語の対応ができるようにしましょう】
ご承知のとおり、外国人観光客の受入に対して最善の策は、外国語対応を可能にする(例:外国人スタッフを雇用する、外国語を学ぶ等)・外国語の表記を充実させることです。
しかし、一番ハードルが高い部分と考えている方も多いのではないでしょうか。スタッフ全員が完璧な外国語を話せるようにならないといけないとか、施設のすべてを完璧な多言語対応にしないといけないと思うと多額のお金と長い時間が必要になりますが、まずはできるところから徐々に始めていくことが大切なのです。
冒頭でも触れたように、言葉が分からなくても、指をさして言いたいことを伝える「指差しシート」や、接客時に使えるフレーズ集、店頭で使えるPOPなど様々なツールが作成されていますので、それらを上手く活用しましょう。
また、沖縄県・OCVBでは、パンフレット・Webサイト・飲食メニュー・利用案内等の翻訳にかかる費用に対して、県内事業者様向けに助成を行っています。
また、人材育成に関しても、様々な取り組みを行ってます。
・ 外国人観光客を受け入れるための基礎を学ぶ「外国人観光客受入基礎研修」
・ 一定の条件の下に語学検定の受験料の助成を行う「語学検定受験者支援事業」
・ 各事業者が自ら計画した自社での人材育成研修に対し、その研修費用を助成する「世界に通用する観光人材育成事業」
ちなみに、OCVBでは外国人観光客からの電話を受け付ける「多言語コールセンター」(英・中・韓国語に対応)を運営し、旅行に関する質問や、旅行中言葉が通じなくて困っている際の案内などを行っています。外国人観光客の方にはそちらを案内してはいかがでしょうか。
【その他のサービスについて】
1.支払い方法
「外国人観光客満足度調査」でも指摘されたように、県内は外貨を日本円に両替できたり、外国のクレジットカードなどからお金を引き出す施設が不足しています。両替ができないために買いたいものを諦めた・・・というような機会損失を避けるためにも、下記の対応も有効なサービスです。
・ クレジットカード・デビットカード決済システムの導入
・ 外貨での支払いを受け付ける
・ 県内で外貨両替・海外クレジット・キャッシュカードで現金引き出しができる場所の把握
(自分の店舗・施設の近くのATM・銀行MAPなどがあればなお喜ばれるでしょう)
2.設備
多くの外国人観光客の方にとって、インターネット環境は非常に重要視すべき項目です。
また、無線でインターネットにアクセスできるWi-Fi環境が整えば、設置している事業者はそれを活用して様々な情報発信やマーケティングを行うことも可能です。Wi-Fi環境はできるだけ速やかに整えましょう。これらは、外国人観光客のみでなく、国内からのお客さまにとっても必要とされ、喜ばれるサービスです。沖縄県・OCVBでは県内の事業者様に対し、Wi-Fi設置費用の助成を行っています。
また、日本と海外では電圧やコンセントのプラグの形が異なる場合もあるので、特に宿泊施設では変圧器やコンセント変換プラグなどがあると喜ばれるでしょう。
【お互いのことを理解し、尊重し合いながら誠実に対応する】
第3回のコラムの中でもふれたように、多くの外国人観光客が沖縄の人々の「おもてなし」に満足しています。それは、さまざまな困ったシーンに遭遇しながらも、お客様に喜んでもらうために誠実に対応している皆様の心に感動しているのではないでしょうか。
その誠実な心意気をさらに相手に伝えるために、相手の文化・好みなどを理解し、それにあったおもてなしを心がけましょう。かといって、自分たちが売りにしているものを相手に合わせるために変えてしまったり、好みに合わないからといってなくしてしまうのではなく、相手にもその良さや大切さを理解してもらえるように工夫しましょう。
日本人から見ると、一般的に外国人のお客様は自己主張が強いと感じられることも多いものですが、こちらも「できることとできないこと」を曖昧にせず、はっきりと伝えましょう。その際、きちんと理由が説明できる準備もあると一層納得していただけます。
そこに語学や多言語化といった技術が加わればさらにお客様の円滑な旅行のサポートと自分たちの業務効率化が図れます。
沖縄県・OCVBが目指しているものは、自立した経済を実現し、県民が暮らしやすい豊かな島づくりです。「観光」はそれを実現させるために重要な役割を担っており、世界水準のリゾート地となることが観光の発展へと繋がると考えています。
わした島・沖縄を世界水準のリゾート地にするためには、県民一人一人の観光に対する意識の高まりが必要不可欠です。外国人観光客を受け入れてみること、それも重要な一歩です。
入門編は今回で終了となります。
いかがでしたか?意外とすぐ取り組めそうだな、と感じる事例もあったと思います。 さっそく今日から「インバウンド」始めてみませんか?