2012/09/07
記念すべき第1回目は沖縄の玄関口といっても過言ではない、那覇空港のOCVB観光案内所を訪れた。
外国人観光客が沖縄(那覇)に到着後、真っ先に目にする案内所。
沖縄の旅のはじまりを支える重要な役割を担っている。
年中無休、笑顔で、豊富な情報を提供する観光案内所の職員。
現在は9名(英語対応5名、中国語対応2名、韓国語対応3名)のなんとも多言語な顔ぶれが並ぶ。
今回はその中から瑞慶山さん、浜川さん、謝さんに突撃インタビュー!
◇◇◇◇◇
(写真左から)
・瑞慶山さん(金武町出身) OCVB空港観光案内所一番のベテラン。みんなが頼りにするリーダー。
・謝さん(中国・桂林出身) 日本・沖縄在暦17年。那覇マラソンに一回参加。県民の応援に大感動。
・浜川さん(南城市佐敷出身) 韓国に興味を持ったきっかけは韓国映画。高校時代から独学で韓国語を学び、4年前に3ヶ月間韓国へ留学。
--まずは自己紹介をお願いします。
(瑞慶山) 観光案内所での勤務は5年目です。県内でも海外でも旅行が大好きで観光に携わりたいと思いこの仕事に就きました。
(浜川) 今年4月から勤務してまだ半年です。沖縄と海外をつなぐ仕事に興味を持ち、この職を選びました。前職は、空港でセンディング(団体旅行受付カウンター)勤務。台風時に英語も日本語も通じない韓国人のお客様に出会い、お手伝いができた経験から、観光案内所に興味を持ちました。
(謝) 私もまだ勤務半年です。前職は中国語教師。教え子の多くが観光現場に就職する姿を見ながら、観光業界に興味を持っていました。
--空港観光案内所で感じることは?心がけていることは?
(瑞慶山) 案内所は沖縄(那覇)到着後、真っ先に目に入る場所。お客様は、みんな期待に胸をふくらませ、目をキラキラさせています。ここから旅がはじまるんです。なので、いつも笑顔、おもてなし、元気を大切にし、にこやかに送り出すことを心がけています。
それから・・・とにかく「忍耐」も重要です!案内所を訪れる方は、1時間もじっくりと質問をされる方も少なくないんです。
(浜川) 正しい情報をきちんとご提供できるように、と心がけています。第一印象を大切に、笑顔で、声のトーンも上げて(笑)対応しています。
(謝) 今までサービス業についたことがないので、観光案内所は「サービス精神」が重要、と実感しています。
(瑞慶山) それとやっぱり「忍耐」よね!
--なるほど。3名とも本当ににこやかな笑顔で感じがいい。でも「忍耐」を連発するベテラン瑞慶山さん。実は一番重要なのは「忍耐」なのかもしれない・・・。
--近年外国人観光客は増えたと感じますか?
(瑞慶山) 確実に増えています。OCVBの那覇空港観光案内所は国内線と国際線ターミナルの2箇所にありますが、国内線ターミナルでも外国人のお客様は目に見えて増えています。
数年前までは国内線ターミナルで観光案内所を利用される外国人は欧州からのバックパッカーが多かったのですが、近年は中国本土のお客様の増加を実感しています。
続いて香港。でも香港のお客様は比較的旅慣れているので案内所の利用は少ないです。韓国からのお客様は他と比較すると少ないほうですが、旅慣れていることに加えインターネット等での下調べをしっかりしているので同じく案内所の利用は少ないですね。
--夏場はトップシーズンなので特に多いが、今年の7月を例にとると、約6,900人の観光客が国内線と国際線の案内所を訪れる中、外国人は約2,500名。中華圏、アメリカ、欧米の順に来客が多いそうだ。(注1)
--外国人観光客からはどのような問い合わせが多いですか?
(瑞慶山) よくある質問は…
① ホテルや観光地へのアクセス方法
② 両替所、海外カード対応可能なATM、銀聯カードが使用できる場所。
クレジットカード対応の有無。海外では近距離のタクシーでも、ちょっとした買い物でも、なんでもカード払いの生活。現金をお持ちでないことも少なくありません。現金がない、カードは使えない、と困ってしまいますね。
また、案内所は21:00までなので、時間外に到着のお客様に対してもご案内できる方法を空港の総合案内カウンターに情報提供して引きついでいます。ちなみにパレット久茂地横の郵便局ATMなら平日23時まで、海外カードで現金が引き落とせます。モノレールかクレジットカード対応可能なタクシーでパレット前の郵便局をご案内すれば何とかセーフですよね。
銀聯カードについては、数年前までは使用できる箇所なんて数えるくらいでしたが、今は、だいぶ増えていますね。
③ インターネット、Wi-Fi、SIMカード
これは最近、急増しているお問い合わせです。それから、私がここ数年の変化のひとつとして感じることは、2,3年前までは外国人のお客様の宿泊取次ぎ業務が多かったのですが、除々に減少しています。インターネット等の情報が充実し、外国人のお客様でも独自に事前に宿泊予約ができる環境が整ってきているのでは?と感じます。(注2)
--こうして増えてきている質問に対しての準備はどのようなことを?
(瑞慶山) お問い合わせの多いWi-FiやATMの位置情報など、絶えず更新しています。
案内所では答えられないことはないほど豊富な情報を整理していますが、それぞれの資料に担当者をおいて、各担当者が日ごろから新聞、ちらし、ニュース、インターネットなどを用いて情報収集に励みながら随時、最新の情報を揃えるようにしていますよ。
--ふむふむ。確かに。質問にはぱっと資料を出してくれる。頭の中にもかなり暗記されているぞ。日々の努力の賜物なのだな。どのような質問があっても答えられる、多種多様な最新の情報を、常に把握しておかないと観光客の質問に答えられない。幅広い情報収集の求められる仕事のようだ。
--日々、世界中の方々に出会うエキサイティングな観光案内所。この仕事のやりがいや、今まででうれしかったことは?
(謝) 案内したお客様が帰国する前にわざわざ案内所に立ち寄ってお礼を言ってくださることもあるんです。「楽しかったよ。案内所の情報が助かったよ。沖縄に来てよかった。ありがとう。」などといわれると本当にうれしいです。
(浜川) 先輩たちが積み重ねてきたこの豊富な情報は本当にすごいんです。何でも案内できます。お客様から求められた情報をさっとご提供できるとうれしいです。
(瑞慶山) 私もお客様からの「ありがとう」を聞くと疲れも吹き飛びます。時には帰国後、葉書や国際電話までいただくこともあるんですよ!案内所は観光案内以外のお問い合わせもとても多いんです。忘れ物だとか、何か困ったことで相談にいらしたり。バスにパスポートを忘れたというお客様のお手伝いをし、無事にパスポートがお手元に戻ったときは「You Saved my life!(あなたは命の恩人だ!)」。なんて言われて。このセリフ、よく言われるんです(笑)
人助けではないですけど、お役に立てるとき、ここでしかできないサポートができるとき、やりがいを感じますね。
--逆に辛いこともあるのでは?
(謝) クレームをいただくこともありますね。怒っているお客様の対応はぐっと我慢します。
(瑞慶山) 何でもお客様のご要望どおりになるわけではありません。たとえばレンタカー。ジュネーブ条約の協定によって、特定の国の方が沖縄でレンタカーを借りるには自国の運転免許証と日本語の翻訳文が必要です。そのことをご存知なく、予約も終えて、完璧な旅程計画を立てて沖縄にいらっしゃってもレンタカーが借りられないというトラブルが少なくありません。お怒りの気持ちはとてもよく分かりますが、できないことはきちんと伝えなければなりません。
また、たとえばご予算とご要望が合わない場合も。「1泊○千円で、海辺のリゾートホテルを探して」などのリクエストもありますが、少しずつ優先順位を伺いながら可能なご提案をしています。
期待で目を輝かせてやってきたお客様の顔がだんだんと曇っていく様子を見ると、とても胸が痛いです。お怒りになったり、がっかりされてパンフレットをパーンっ!ってカウンターにたたきつけられることもありました。
--空港案内所からは、こうしたお客様によくあるトラブルなどをOCVB本社などに情報提供してもらい、可能な限りトラブルが減るように努めている。例えばレンタカーに関しては、海外事務所を通じて海外の旅行会社への注意喚起を促したり、様々な媒体で情報発信を行っている。
毎日お客様の生の声に触れ、それをお客様の満足度向上のために集約しフィードバックしてくれているのだ。
(謝) 案内所は出会いの場でもあります。案内所がきっかけでお付き合いしたり、結婚した方もいます。
(瑞慶山) 私はチョコや飴玉、ジュースのプレゼントをいただいたこともあるんですよ。
(浜川) Rさんはワインやお花などいただいてましたよ。
(瑞慶山) えーーー!???
--日本人観光客との違いは?国籍別の特徴は?
(瑞慶山) 案内所に立ち寄る日本人のお客様は全く何も決めずにふらっと訪れる方も多い。国内なので、何とかなる、という気持ちに加えて沖縄が安全で魅力的、という証拠でもあるでしょうね。
韓国人のお客様はインターネットの情報をそのまま信頼して行動。他の国籍に比べ、案内所に来るのは少ないかもしれないですね。そう考えると、国によって、行動が違うのはおもしろいですね。
(謝) 中国人のお客様もインターネットで下調べしてくるのですが、改めて案内所で「この情報は正しいか?ここは本当におすすめか?」と口頭でも二重に確認することが多いです。
(浜川) 欧州のお客様は、日本語がとても上手な方が多いです。あと、ディズニーのスーツケースを持っているのは香港の方。(笑)
(瑞慶山) バックパッカーは欧州の方。どちらかというと、ゲストハウスが好きですね。
(謝) 私は、同じ中国語圏でも外見・雰囲気ですぐ分かりますよ。 北京・上海方面の方は、品のあるお化粧をしていておしゃれ。香港の女性は、スカートではなくズボンの方が多い。台湾の方は、笑顔が沖縄の人に似ていて、ひとなつっこいと思います。
--さすが日々多くの外国人と接しているからこその識別力!?まさに「空港観光案内所あるある」ですね。
--沖縄におけるインバウンドの課題は?
(謝) 公共交通の充実が必要です。ホテルや観光施設間を巡る、誰でも簡単に利用できる交通手段が必要だと思います。桂林はこうしたバスが無料で走っています。
(浜川) Wi-Fiの整備です。せめて空港内ではぜひ。Wi-Fiが使えない、というクレームはほぼ毎日聞きます。バスなどの公共交通も表示や車内アナウンスの多言語化が必要だと思います。
(瑞慶山) 交通は重要ですね。無料ではなくとも、カード払いが可能な環境が整うことが大切だと思います。バスなども、パスやカードで全路線、一律の料金で分かりやすいことが大事です。あの路線は対象外、あの路線までは別料金、などはお客様に分かりにくい。海外で小銭をそのつど準備するというのは意外に大きな負担だと思います。難しい問題かもしれませんが、各バス会社の徴収方法を統一して、1日フリー乗車券やモノレールにも乗れたりしたら良いですね。
--Wi-FiやSIMカード利用など、ネット環境の整備は、予想以上に緊急の課題のようだ。そして観光の基本となるアクセス手段は、バスに期待される部分がとても大きいようだ。最近は、コミュニティーバスや連絡バスが運行しているが、まだまだ改善できそうだぞ。
--10年後の沖縄インバウンドはどのようになっていてほしいと思いますか?
(瑞慶山) 風景の美しさを望みます。海外旅行に行くと、その国の風景にうっとりします。毎日金武町から通勤しながらよく気になるのですが、道の雑草、ゴミ、とても残念に思います。サミットや国体のときはとても綺麗でした。県民一人ひとりが街並みをつくっていく、という意識を高めて、窓からの景色も楽しめる沖縄になってほしいです。
(浜川) 日本の中の沖縄、ではなくハワイのように、「沖縄」だけでも世界のブランドになってほしい。どうしたらそれが叶うのかはまだ分かりませんが。あと、観光で自立していけることを願っています。
(謝) 私も一時的な予算に頼らなくても、観光で自立していける沖縄を望んでいます。国際レベルのリゾート地になってほしいです。
(瑞慶山) 最近、オランダからのとても裕福なお客様をご案内しました。オランダの旅行会社か旅行博覧会で、たまたま目にした沖縄のポスターに魅了されてそれだけで沖縄旅行を決められたそうです。沖縄はそれだけの魅力をもっていて、可能性があるんだと思います。
--最後に、県民一人ひとりができる「インバウンド」とは?
(浜川) 恐怖心を持たずに、進んで外国人のお客様に接してほしいです。韓国語ができないから、とひっこんでしまう方をよく見ますが英語でも日本語でもいいんです。進んで話しかけてください。
(瑞慶山) そうですね。道で立ち止まって何かお困りの様子であったら声をかけていただけるとよいですね。それから、外国人の方でも、やっぱり何度も訪れたくなるのはその土地の庶民の暮らしや文化に触れたときだと思うんです。
私は海外でも日本でも一般家庭のお庭が好きです。南城市にお庭めぐりの観光ツアー(注3)がありますが、あのようにおばぁのお家を訪れることができたらとてもよいと思います。那覇市(注4)や名護市(注5)でも「まちまーい」がありますが、外国人を対象としたものができたらなぁと思います。県民もこうした交流によって、外国人に対する理解が深まると思います。
(謝) 誰でも、どこでも、無料で(笑)できるのが笑顔ですね。
地元の人とのふれあいはとても印象深いので、学校でも外国語のあいさつだけでもできるように教えられるとよいと思います。
◇◇◇◇◇
<取材後記> インタビューの節々に細かなアクセス手段や営業時間など、自然と豊富な知識がすらすらと出てくるのに驚くとともに、さすが観光案内所の職員!と感服した特派員。常に笑顔で、話しやすい雰囲気と分かりやすい説明。ついつい長居してしまう旅行者がいるのも納得だ。
那覇空港観光案内所では、年中無休、晴天の日も台風の日も、今日も世界中のお客様を笑顔でお待ちしているのだ。 (リポート:インバウンドおもてなし向上委員 マハエ、比嘉、大城)
那覇空港観光案内所
空の玄関・那覇空港の到着ロビーには「OCVB那覇空港観光案内所」があり、宿泊や交通、観光施設、イベントについて幅広く案内しています。
【国内線1階到着ロビー】
年中無休/9:00~21:00
TEL 098-857-6884
【国際線到着ロビー】
年中無休/10:30~19:30
TEL 098-859-0742
◇◇◇◇◇
(注1) 昨年の那覇空港観光案内所(国内線・国際線合計)年間来所者数、約71,000人。外国人、約15,000人。
(注2) 宿泊取次ぎ業務件数
平成20年 | 平成21年 | 平成22年 | 平成23 年 | 平成24年 | |
---|---|---|---|---|---|
合計 | 153 | 157 | 95 | 65 | 105 |
6月 | 38 | 21 | 16 | 18 | 18 |
7月 | 65 | 46 | 38 | 11 | 20 |
8月 | 50 | 90 | 41 | 36 | 67 |
※平成21年8月:台風8号接近と、1日だけで10件の突発的な宿泊取次ぎ対応。
※平成24年8月:台風11号、15号が相次ぎ接近。欠航による宿泊対応が増えた。
(注3) 南城市観光協会 憩いのオープンガーデン http://okinawa-nanjo.jp/garden/
(注4) 那覇まちま~い事務所 http://www.naha-machima-i.com/
(注5) まちかどトリップ@なご(NPO法人 HICO) http://www.hico.or.jp/machikado-trip/
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