2013/11/25
沖縄が世界に誇る文化、空手。沖縄で生まれた空手・古武術は数百年の歴史をもち、現在、世界150か国に5,000万人もの空手愛好家がいると言われています。そのような中、年間約2,000人余の外国人空手愛好家が沖縄を訪れていることを、ご存じでしょうか。今回、沖縄伝統空手の総合窓口として、県外・海外の空手愛好家や関係者に向けて、情報発信と受入れサポートを行っている「沖縄伝統空手総合案内ビューロー(代表:名城政一郎)」の活動に迫ってみることにしました。
―ダルーズさん、本日はお忙しい中、わざわざお越しいただいて、ありがとうございます。さて、ダルーズさんはフランス出身ということですが、沖縄にいらしてどれぐらいになるのでしょうか。また沖縄にいらしたきっかけも教えてください。
(ダルーズ):沖縄に初めて来たのは、1993年。今年の9月でちょうど、20年になりました。私がフランスでたまたま沖縄剛柔流の道場に入っていて、空手の本場、沖縄でいつかやりたくて訪れたのが、縁ですね。
沖縄に来た当初は、日本語が分からないから、大工や工事現場、フランス語の講師など、色んな仕事を経験しましたよ。それから、2001年に永住権を取得して、2009年に行われた世界空手大会の通訳の責任者として関われたのは、非常に良かったですね。
―毎年、沖縄を訪れる外国人空手愛好家はどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。
(ダルーズ):正確な統計の数字はありませんが、少なくとも2,000人は来ていますね。大きな大会やセミナー、少数のグループなどで来沖する方が多いです。世界大会になると、一度に700名訪れたりもします。
―1度に700名ですか!!たくさんの方が訪れているのですね。ダルーズさんたちがこれまでサポートしてきた空手愛好家はどれ位いらっしゃるのでしょうか。また、どういった国籍の方がいらっしゃるんですか。
(ダルーズ):100名位でしょうか。今年はこれまでに84名サポートしてきました。去年は準備期間がなかったため、21名となっています。また、沖縄を訪れる方は、欧米の人が多いです。
―本当に色々な国の方が来ているのですね。海外の空手愛好家はどれぐらい沖縄に滞在されるのですか。
(ダルーズ):指導者なのか、一般の空手愛好家かなどにもよりますが、大体1週間から1か月ですね。平均は10日ぐらいだと思いますが、まちまちです。
―外国人空手愛好家が、沖縄を訪れる目的は何があるのでしょうか。空手発祥の地である沖縄への憧れや、沖縄の空手家たちとの交流など色々理由は考えられると思いますが。
(ダルーズ):もちろん交流したいという方もいるのですが、自分の先生から指導を受けて、自分の空手を深めたいというように、一番の目的は空手の稽古です。沖縄に訪れる外国人空手愛好家は、2パターンいらっしゃいます。まず一番多いのは、沖縄の先生の弟子たちで、90%はこのような人たちです。沖縄との連携があるため、既に行き先が決まっていて、また何度も沖縄を訪れたことがある人も多いです。残りの人たちは、沖縄の道場と連携がない人たち。私たちの空手ビューローは、この沖縄の空手界と連携を持たない人たちを、新しい沖縄ファン・沖縄空手愛好家と見て、この方たちのために沖縄空手の情報発信をしています。
―ダルーズさんは、沖縄に連携を持たない海外の空手愛好家との橋渡しをしているのですね。
(ダルーズ):沖縄と連携が無い人たちは、どこの道場に行けばいいか分からない、どこに泊まればいいかわからないので、その方たちにサポートをします。ボランティアで出来る部分があるなら、私もやりますし、パッケージを作って欲しい方に対しては、コーディネート料をいただいております。
フランスの格闘技雑誌の記者に通訳をするダルーズさん。4か国語を話せるため、海外の方へ空手をはじめ、沖縄の歴史や文化をきめ細かに伝えることができるのは、ダルーズさんの強みといえます。
―空手ビューローのスタッフは何名いらっしゃるんですか。
(ダルーズ):スタッフは、私ともう1人、日本人のスタッフ2名でやっています。他に、常駐ではないですが、通訳のボランティアスタッフが10名と、校正の方2名ですね。
―通訳のボランティアスタッフはどのような方たちなのでしょうか。
(ダルーズ):空手経験者です。空手の通訳をするには、空手を理解していないとできないのです。空手と言語が分かる人で、現在、英語、フランス語、スペイン語、中国語の4か国語に対応しています。ただ、こういった人たちを空手の大会などでもっと活かせることができたらと、思いますね。
―空手ビューローのホームページは現在、5言語(日本語、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語)ありますが、各言語に対して、ボランティアスタッフも携わっているのでしょうか。
(ダルーズ):ロシア語以外は、全部私1人で運営も更新も行ってます。
―たった1人でですか!?
(ダルーズ):例えば、日本語と英語に関しては、ほぼ同じ情報を掲載しております。
また、フランス語とスペイン語は、内容を省略してやってますね。ロシア語は、固定ページになっているのですが、ロシア人から問合せが来ても、全部英語でやり取りしてますね。翻訳が難しい場合は知り合いに頼むこともあります。
また、業務としては沖縄空手の情報発信が最も多いです。一つの流派にこだわらず、各流派の情報、年間行事、空手関連ニュースなどを出しています。そして、ホームページを通した、沖縄を訪れる方たちの受入サポートですね。
今年の9月からは、沖縄尚学高等学校とタイアップして、外国の高校生を対象に留学プログラムも始めましたが、まだこれからです。今後はこのプログラムが大きな柱になればと思っています。
―どのようにして海外から空手ビューローに問合せが入るのでしょうか。
(ダルーズ):ホームページでの問合せが一番多く、次いでFacebookですね。ただ、色々な方がいらっしゃるので、問合せていただいた方にまず、アンケートシートを送ってます。このアンケートシートには、名前・住所・仕事・所属の流派・段位・来沖の理由・来沖予定日などを記入してもらって、やり取りを行います。それに合わせて、県内の道場の紹介や、ホテルなどの宿泊施設の案内、また人数などによっては、セミナーなどのセッティングなどもやります。
―空手愛好家はもちろん、空手の稽古のために沖縄へ訪れると思うのですが、空手以外にも、何か求めるものなどがあるのでしょうか。
(ダルーズ):アクティブな体験、例えば、空手の他にダイビングを行うというような事は少ないと思います。やはり空手がメインなので、午前午後夕方と稽古して、その間休んだり、洗濯をしたり、それだけで一日が終わります。ただ、エイサーや祭りなどの問合せがうちのホームページでも多いので、それをもっと分かりやすく情報発信をすれば、空手の稽古と合わせて、色々なプランを作れると思います。
―海外の空手愛好家が、県内の道場を訪れた際に、言葉の面で困ったりすることは多いですか。
(ダルーズ):私が紹介する道場は、海外に通用する先生方です。自分のメンバー以外、または外国人を受け入れたくない先生は紹介しませんし、語学ができる弟子に通訳をしてもらうなど、今のところ言葉に困ることはそんなにないですね。
また、うちのホームページでは、沖縄を訪れる外国人のために「オキナワガイドブック」を掲載しています。現在2回更新してますが、エチケット、食べ物、緊急時の連絡先など、沖縄に行く際にはまず知っておこうというような、ガイドブックになります。
【参考:OKINAWA GUIDE for KARATE VISITORS ※英語のみ】
http://okkb.org/services/okinawa-guide-for-karateka
―おもてなしをする時に、ミゲールさんが心がけていることは何でしょうか。
(ダルーズ):「沖縄に来て良かった」と思っていただくことですね。空手をやる人にとって、沖縄は憧れの地。おそらく空手人口が5,000万人の中で、5%の人でも沖縄に来ていただいて、満足させて帰すことができるならば、何よりも沖縄のPRになることだと思います。以前、沖縄を訪れていたオーストラリア人が、とある道場で稽古中、正面へ礼をして頭を上げた際に、5世代にわたる先生たちの写真を目にして、とても感動したと仰っていました。彼にとっては「技というより、空手の歴史に礼をした」と言うんですね。なぜかというと、空手の指導を始める前に、私が通訳に入って、先生が道場の歴史の説明し、それを理解して礼をしたからです。本当のおもてなしは、ケアする人がいて、きちんとした体制で受け入れて、喜ばせること、それが一番素晴らしいPRになるんじゃないかな。
海外の空手愛好家の特徴、また空手ビューローの取り組みなど、知らないことだらけでした。ダルーズさん、本日はわざわざお越しいただいて、ありがとうございました。
■取材後記
今回取材させていただいて印象深かったのが、海外の空手愛好家が沖縄を「空手の本場、憧れの地」と認識している点です。それだけに、沖縄観光にとって、「空手」というコンテンツは大きなポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。更なる外国人空手愛好家の受入にあたって、沖縄空手の情報発信の強化や、沖縄空手界との連携、また言語対応できる人材の育成など、今後ますます求められていくと感じました。「空手発祥の地」沖縄を世界に向けてもっとアピールしていくために、ダルーズさんたちのこうした地道な取り組みを、私たち県民はもっと認識を深めないとけませんね。
【沖縄伝統空手総合案内ビューロー】
・電話番号:098-851-3669
・FAX 番号:098-851-3689
・住所:〒900-0005沖縄県那覇市天久1-25-25
・お問い合わせ: http://okkb.org/contact?lang=ja
≪取材・構成≫ OCVB海外事業部インバウンド戦略推進課 花笠マハエ、平田、田村
≪本件に関する問合せ≫
インバウンド戦略推進課
TEL:098-859-6130